第8回福祉健康部会

第8回福祉健康部会 議事録

○日 時   平成24年2月14日(火) 19:00~21:00

○会 場   小出庁舎 3階 委員会室

○内 容

1.県立小出病院 内科医師  仲丸 司 先生との意見交換

(1)自己紹介と簡単な業務紹介

 

(2)質疑応答

質問1:医師不足という問題において、どのような形で病院の運営に配慮し、また市民が病院に対して協力すれば、医師が集まりやすくなるのか教えて欲しい。

回答1:先ず、ちゃんとした日常生活が送れなければ、いい仕事はできないと思っています。子供の教育ですとか、安心して子育てができる環境が必要だと思います。
 仕事の面ですが、医者がこれだけ少ない中で仕事をしていくには、チームワークが大切だと考えています。
 地域住民が協力できることですが、一番は何でもかんでも救急車を呼ばないというのが、大切なのではないかと思います。医療機関の利用の仕方について考えていただく、そうして負担が減ると私たちも学会ですとかに出ることができるので、新しい治療法ですとか症例を学ぶことができます。
 生活の場ですとか仕事の環境ですとかが整っていて、そして学ぶことのできる時間があるという環境が整っていれば、新しい医師が集まりやすくなるのではと思います。

 

質問2:母が小出病院に通っているが、病院の中でも科が違うだけでその患者が他の科でどんな治療を受けているか知らないというようなことがありました。先生はチームワークが大切だというが、本当に連携ができているのか心配です。これから基幹病院と新小出病院ができて、同じ地域内で本当に連携がとれるのか心配です。医師が足らないことや専門分野以外の分野に目を向ける時間が無いのは理解していますので、勤務されている医師の皆さんに一生懸命やっていただければ何もいうことはありません。

回答2:専門性が必要な分野になってくると、どうしても優先的に自分の分野にばかり目がいってしまって、後のところは他の科に任せて自分の治療できるところをしっかりやろうという意識が働いてしまいます。そうすると他の科のことについては、なかなか意識を向けることができません。

 

質問3:基幹病院や新病院ができることで、地域医療が変わるという時期に来ているのだと思います。また透析治療といったものは、新潟県全体でもこの地域限定でも構いませんが、どのような形で推移していくのかわかったら教えてください。

回答3:全国的には、約430人に1人が透析患者とされています。魚沼市の透析患者の割合は、約200人くらいです。新潟県は全国的に見ても透析患者が少なく、魚沼市も例外ではなく全国平均に比べると少ないです。

 

質問4:透析治療というのは、一生やり続けなければならないのでしょうか。手術などで透析治療をしなくても良くなるのか教えてください。

回答4:残念ながら、今の医療では機能を失った腎臓を元に戻すことはできません。唯一可能なのが、腎臓移植です。それ以外に透析治療をやめることはできません。
 しかしこれは慢性腎不全の場合で、例えば急性腎不全の場合ですと病気などで一時的に腎臓が機能しなくなって透析治療を行わなければならなくなりますが、病気が治って腎臓機能が回復すれば、大丈夫になります。

 

質問5:糖尿病は治らない病気ですが、病気の進行を遅らせたり止めたりすることはできますか。自分では生活に気をつけて、病気が進まないようにしているつもりですが、加齢とともに体が衰えてきますので、だんだんと悪くなっていくような気がしています。

 回答5:正常な状態を続けていても、加齢とともに悪くなることはあります。それというのも、インシュリンというホルモンが相対的に低下してくるということがあります。それはある程度しょうがないことですし、生活習慣を見直すことやいい薬を使うことでいい状態を保つことは、不可能なことではありません。

 

質問6:小出病院に集中している患者さんたちを、小出地域にたくさんいる開業医の方々に分担して診ていただければ、小出病院の負担が減少するのではないか。患者さんの中で開業医の方々に診てもらえると考えている割合はどのくらいでしょうか。

 回答6:ある程度症状が改善して安定期に入った患者さんであれば、開業医の先生に診ていただいたらどうですかと提案しています。どうしても小出病院でなければいやだという方もいますし、快く了承してくださる方もいます。ただ、最終的に決めていただくのは患者さんですので、こちらから無理にお願いすることはできません。

 

2.上村伯人先生から魚沼地域医療学校について

 魚沼地域については医者が足らず、本当に連携が取れるのかと心配する声が先程ありました。個々の医者が忙しすぎて、連携する時間が無い。そうであるならば、もう少し医者を増やして負担を減らし、互いに連携する時間を作らなければ、対応できないのではないかということで、基幹病院の話が出てきたのです。市民の皆さんが、基幹病院と新小出病院、開業医それぞれの役割を確認し、理解して使い分けていただかなければなりませんし、大きい病院ができたからといってそこにばかり行ってもらっては困ります。血圧の薬をもらう、湿布をもらいに行くといったことで基幹病院に行ってもらっては困るのです。自分が行くべき病院はどこなのか、ということを理解してもらいと思います。

 また医者が足りないということについては、患者を減らすのが一番大切なことです。この地域に医者がたくさんいて、患者もたくさんいて、医療費がたくさんかかるというのがいい医療ではありません。患者さんを減らすことがいい医療なので、病気にならないために学んでもらう。そして病院などの医療の使い方を学んでもらうということで、地域医療学校が昨年から始まりました。

 先日一年間の活動報告ということで会議がありました。各諸団体(老人クラブ、婦人会、コミュニティ協議会、商工会など)で健康教室をさせていただいたり、地区の集会所で健康講座を行ったり、学校で禁煙教室を行うなど、各地域に出かけて行きました。

 魚沼地域の医療費は、全国平均と比べて大分安いのですし、新潟県自体が下から3番目というように安くなっています。しかし医療費が安くすんでいるのは医者が少ないという理由もありますし、一つの病院でいろんな病気の薬をもらったりするということもあります。都会ですと地域にたくさん病院がありますので、塗り薬は皮膚科へ行く、目薬は眼科へ行くなど診察券をたくさん使えば、それだけ診察料が掛かります。もちろん地域の皆さんが努力して、病気にならないようにしているというのも大きな理由です。

 ただ喫煙に関して言うと、全国平均よりも高くなっています。タバコはいろんな疾病につながるものですので、そこは皆さんに努力していただきたいと思っています。いろいろなところで出前講座を行っている中で、参加された方から大きな病院を造らなければだめだというようなことを言われるのですが、タバコを吸いながらそのような意見を言わないで欲しいとも思います。また食育や性教育、子宮頸癌ワクチンや肺炎球菌ワクチンの助成など、行政と協力して医療の無駄や患者を減らそうという試みも行っています。

 他には医療に従事する人たちを増やそうということで、病院での職場体験などの取り組みを行っています。連携という点では、医者が足りないのでいろいろな職種の方々と連携して仕事をしていこうということで、介護の方や訪問看護の方などと一緒に勉強したりする機会も設けたりしています。

 病院と診療所の役割については、病院に来る患者さんを少しでも減らしていくことも進めていきたいですし、それによって例えば小出病院ですと診察時間を減らすことができるので、その分医師の方々は入院している患者さんなどに時間を使うことができます。診察時間が長引けば、それだけ入院している患者さん方を診る時間が遅くなりますし、そうなればその間に症状が悪化した場合処置が間に合わないことになります。また看護士さんたちも時間外の仕事をしなければならなくなりますし、その日の内にやらなければならない仕事もやれなくなるわけです。こういった外来の業務にかかりきりになってしまっている現状をなんとかしなければならないといけませんし、外来ばかり重視してその他の業務を疎かにするわけにはいきませんので、ある程度外来の時間などを制限することは仕方のないことです。内科の先生たちも本来であれば午前中で診察を終えて他の業務を行いたいと思いますし、そのために外来に来る人の数を減らしたほうが絶対いいわけです。

 そのためにどうするかというと、ある程度良くなった患者さんは診療所で診てもらうといったことが必要なのです。しかしこの魚沼市では人口当たりの診療所の数が少ないので、どの程度診療所で受けられるのかという見極めが大切です。例えば守門地域に診療所がありますが、医者がいなくて市内の医者が交代で勤務していますが4月から常勤医師が見つかりました。そうなればこれまで守門に常勤の医師がいなかったから小出まで来ていた人達を、診療所に行ってもらうようにしようと思っています。例え自分は整形外科にも通っているから小出病院がいいというような患者さんがいても、あなたの内科の症状はもう落ち着いているから診療所に行ってください、といったように患者さんにもきちんと理解していただいて、小出病院の医師の方々が本来の業務が行えるようにしなければなりません。そうやって少しずつ地域の診療所に人を返していて、小出病院が疲弊しないようにしていく必要があります。

 地域医療を継続して行っていくには、地域住民の方々の協力が必要不可欠です。私はこれまで何人かの人の最後を看取ってきましたが、全部夜間診療でした。昼間の診療時間中に都合よく亡くなるなんてことはありません。夜会議をしていた時に連絡が来たこともありましたし、お酒を飲んでいる時に来たこともありました。そんな時はもうお酒を飲んだから今日はいけない。明日なら行けるというと、それでもいいから来てくれと言われました。このように地域の方々が医者に対して協力や理解をしてくれていれば、医者も無理せず医療を行っていくことができます。例えば口から食べることができなくなり、胃に管を通して栄養を取る胃ろうというものがありますが、これは患者自身にもご家族にも負担がかかります。無理な医療を選択するのではなく、もう食べられなくなったから無理して胃ろうをしなくてもいい。先生が十分面倒を見てくれたからしなくていい。そう言ってくれれば、地域が医療に対して理解をしてくれれば、医者は無理な医療を施さず負担のない地域医療を続けることができるのです。

 欧米などですと、認知症などで寝たきりになったり食べることができなくなった場合、胃ろうなんかしません。食べれなくなったらその人の寿命です。それ以上の無理な延命はしない。しかし家族の方がそれを望めば、医者はしなければなりません。そうすると医者や家族の負担が増えますし、医療費の負担にもつながるわけです。このような寿命になった人に対してどのような選択をするかということも地域で考えていかなければなりませんし、取り組んでいきたいと思います。

 

3.健康増進室長からの感想や意見

 今ほど、仲丸先生、上村先生からお話ししていただき、この地域は医師不足が全国平均よりも低いということで、市民の皆様も大変心配していることですし、市としても大変苦慮していることであります。しかし先ほど上村先生からお話しいただきましたように、子宮頸がんワクチンなどについては地域の医師や医師会にご協力をいただきまして、全国に先駆けて実施をすることができましたし、更に対象者の90%以上の市民に受診していただいています。またこれに対して表彰をいただきました。人口4万人規模、医師の数も少ないのだけれども、行政と医療機関、地域が一体となってやっているということが実を結んだのではないかと思います。小出病院の先生方、救急医療や外来で大変疲弊しているということですし、先ほどお話にありましたように市民の方々にかかりつけ医を持っていただいて診療所などを利用していただき、少しでも負担を減らすことのできるように行政も広報等をしていかなければならないと思っております。健康づくりに面についても、上村先生や仲丸先生などからご協力をいただきまして、市民一人一人が自分の健康は自分で守るといった意識を持ってもらえるように、取り組んでいきたいと考えております。

 

4.全体を通しての質疑応答

質問1:他の大学には、内科や内分泌科といったものが一緒になった糖尿病科といったものがあるが、新潟大学にはないので今後できる予定はあるのか。

回答1:今そのように科を統合する動きもあれば、逆に病気別に分ける動きもあります。一長一短ありますので、どちらがいいということは断言できないのですが、いずれにしてもそのような科を設置するには人手が必要ですので、作るのは大変です。

 

質問2:自分は糖尿病で足も悪いのだが、病院では薬などは出るが足を診てもらったことはない。医師や看護師は糖尿病で足が悪くなるのを知っているのか。

回答2:患者が医師に診てもらった満足する時間は、だいたい一人20分だそうです。今言われたように足まで診てほしいということですが、多くの患者さんを診なければならない中では、なかなか足まで診ることは難しいのではないでしょうか。なので看護士さんに任せているのだと思います。もちろん看護士さんが知らないということもありますが、最近では足のことも勉強した看護士さんもいますので、だんだん増えてくるのではないかと思います。また全部一人の医師がやるのではなくて、役割分担をしてチームでやっていこうということもあります。