第5回福祉健康部会

第5回福祉健康部会議事録

○日 時   平成25年1月18日(金) 19:00~21:00
○会 場   小出庁舎 3階 302会議室
○内 容

1.上村先生のお話

<現在の魚沼市の状況について>

 魚沼市の人口が減っている。世代別に見ると、75歳以上の高齢者が増えており、それ以外は減っている。魚沼市は全国より10年早く高齢化が進んでいる。魚沼市にとっての一番の課題は高齢者問題であるが、高齢者自体が問題なのではなく、高齢でいても元気でいられれば良い。医療や介護が必要な方の割合が多くなってくるのが75歳以上である。
 魚沼市でも医療費や介護費は増えている。平均寿命に対して元気でいられる期間を健康寿命という。平均寿命と健康寿命の差が年々開いてきている。平均寿命と健康寿命の差は、男性で9年、女性で13年である。この期間は、何らかの支援がないと生活が出来ないということで、そこで介護費用や医療費が発生してくる。
 新潟県の平均寿命は、全国で男性が23位、女性が8位、魚沼市の平均寿命は県内で男性が10位、女性が4位となっており上位である。ところが、健康寿命になると、新潟県は、全国で男性が36位、女性が23位ということで、全国平均よりも悪いという状況である。ということは、新潟県は要介護の方が多いということになる。
 医療費は、新潟県は全国でも一番低いくらいである。特に75歳以上の後期高齢者の平均医療費は、長野県よりも低く、全国でも一番低い。なぜかというと、医者が少ない、足りないので、1つの病院、診療所等で全ての薬をもらっていく。都会は医者がたくさんいるので、水虫の薬なら皮膚科、目薬なら眼科、湿布なら整形外科、というようにそれぞれの医者にかかる。そうすると初診料がそれぞれかかるので、1ヶ所で済ませれば安くなる。だから、魚沼市が合併する前の医療費は、守門は診療所1ヶ所で全ての薬をもらってくるから安かったし、小出の人はあちこちの医者にかかるから高かった。
 医者がたくさんいる地域、都道府県でいうと、徳島や京都は医療費が高い。一番高いのは北海道だが、北海道の場合は医療機関までの距離が長く、通うのが大変で入院する人の割合が高いためであり、北海道を除けば医療費は圧倒的に西高東低である。
 平均寿命と医療費の関係をみると、新潟県の平均寿命は真ん中より少し上だが、医療費は少ない。したがって医者が少ないからといって平均寿命が短いということはない。健康寿命と医療費の関係をみると、人口当たりの医師数が多い自治体ほど健康寿命が短いというデータがある。医者が多いと健康寿命が短くなる。これについては、原因ははっきりとは分からないが、自分で健康努力をしないで、すぐに病院に頼ってしまうところがあると思われる。また、一人当たりの医療費が高い自治体ほど、健康寿命が短い。医療を充実させたら皆が健康になるかというと必ずしもそうではない。健康でいるためには自分で努力をしなければいけないということである。
 医師法の第1条に「医師は医療のみならず、保健指導を司ることによって、住民の健康を守る。」と書いてある。
 だから病気を診断して治療をするだけの医者は、医者としてはまだ半人前であり、保健指導をして病気にならないようにする医者が本来の医者である。医者が足りないから医者を増やすことも大事かもしれないが、医者が足りなかったら患者を減らせばよい。医者が増えれば確実に医療費も増えるが、そんなことを市民が望んでいるはずはない。皆大きい病院を欲しがるが、「本当はそんな病院はいらない、小さくても十分、必要なときに必要なところを紹介してもらえれば、それでよい。」という意識を持ってもらいたいというのが、我々の考え方である。

 

<魚沼市新病院について>

 今の東病棟は古く耐用年数も経過しているので取り壊し、西病棟はまだ耐用年数を経過していないので、使い勝手が良いように一部改修して使用する。西病棟の向こう側に外来棟や管理棟を建設することになっている。
 建設スケジュールについては、今年度は実施設計をやっており、平成25年度から新築棟の建築工事が始まる。
 2年後の平成27年6月、基幹病院が出来たときに新病院も開院する予定になっている。基幹病院が出来てから、小出病院に入院している人達で、基幹病院に移る必要がある人達を移した後に、新病院が始まるということになる。その後に、現在の西病棟を改修する。それまでは東病棟を使用し、西病棟の改修が終わったら、東病棟の患者を西病棟へ移し、その後東病棟を解体し、駐車場等の整備を行っていく予定である。
 新病院の基本的な考え方は「身近な医療の充実」、「産み育てる環境の整備」、「予防医療の充実」、「医療資源の育成」というようなこと。
 最初、健診も新病院でできるようにする予定であったが、現在、新潟県労働衛生医学協会やボランティアセンターで行っており、建物もまだ古くないので引き続きそこで行ってもらう。それよりも、皆さんから医療のことをきちんと知っていただき、医療資源になっていただくための「地域医療魚沼学校」の機能が一番重要だろうということと、学生や研修医の受け入れを今小出病院や地区の医師会でやっているが、そういった若い医療スタッフを育てる場所が必要だろうということで、新築棟の2階に、セミナーや健康講座を開催するための講堂を配置していただいた。3階は手術室や管理部門、スタッフの宿泊施設などを配置し、1階は外来、放射線、内視鏡等を配置する。
 西病棟の1階には、病後時保育室や在宅医療部門を配置する。テナント診療所には、ここで開業をしても良いという医師から入っていただく。高齢者の方が多いと歯科のニーズも高くなるため、出来れば歯科に入っていただこうと思っている。
 このような形で新病院がスタートするが、将来的には保健福祉センターも建設する予定である。健診機関と医療機関が別々だと、後日改めて病院に行く人が少なく、健診を受けても受けっぱなしとなり、医療に結びつかない。
 これらを一体化することにより、健診からその足で病院へ行く人が増える。また、本人が健診結果を持って来ない場合、医療機関でもう一度検査をしなければならないが、健診機関と医療機関が直接データをやりとりできるようになるので、検査や治療の遅れが少なくなる。
 新病院に必要な職員数は、医者が15人、看護師が112人、その他薬剤師、放射線、検査技師、リハビリ、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー等を含めると総数で180人となる。問題は医師と看護師の確保である。どうやって集めるかということだが、市民の皆さんからも協力をいただかなければならないと思っている。身内や知り合いに、医師や看護師が居たら是非声をかけていただきたい。残念ながら魚沼市出身の医師でも地元に帰って来ていない人がたくさんいる。
 日本の場合、医師がどこで仕事をするかは、個人の意思に任せている。イギリスやスウェーデンは、何科の医師をどこに何人置くか、国が全部決めている。医師の95%は公務員であり、その地域の医療費の予算は、その地域の医師が采配出来る。業績によって医師の評価も変わってくるが、希望した科の医師になりたくても優秀な者しかなれない、あるいは希望する地域に行けるわけでもない。日本はどこへ行っても自由だが、これが問題だと思っている。医者を育てるのには結構な税金がかかっている。国公立の医学部にはかなりの税金が注ぎ込まれている。
 医者になったから、好きなところに行って開業して良いというのはおかしいと思う。やはり義務年限をきちんと設けて、医者が足りない地域へ行くべきだと思う。
 魚沼は全国平均の6割しかいないが、東京は全国平均の倍もいる。東京で開業しようと思ったら無理、新潟県内でも新潟市で開業するのはかなり難しく、潰れる開業医も年に何人かいる。それでも都会に住みたがる。魚沼に来てもらうためには、どんな風にしていったら良いか、市民の皆さんからも是非考えていただきたい。新病院にとって一番の課題である。医師や看護師が足りない地域は、どこでも色々な好条件をつけているので、特別の魅力がないと、なかなか来てもらえないという状況である。
 県では、子育てなどで一旦退職をした看護師の再就職を支援する研修プログラムを用意ており、地域医療魚沼学校でも、研修プログラムを小出病院でやったが、応募してくれた方は2名だけだった。それも、勉強のために来たということで、就職には繋がっていない。そういう方々が復帰できる条件が難しい。外来のパートなどは出来るが、病棟勤務になると夜勤もあるので、小さなお子さんを抱えた方たちには難しい。
 イギリスは、医者の半数以上が女性である。その人達がなぜ勤められるかというと、時間勤務が可能であり、子どもを預かってくれる仕組みがきちんと出来ている。日本はまだそういう仕組みがないので、女医も看護師もなかなか復帰出来ない。

 

<地域医療魚沼学校について>

 地域医療魚沼学校は、色々な職種の人達が集まって一緒に勉強するところである。隔週の水曜日に小出病院の体育館で、栄養士、薬剤師、看護師、医師、医学生などが一緒に勉強する機会を作っている。オープンになっているので都合のつく方は是非来ていただきたい。先日は、小出病院の薬剤部長さんが薬とコストについて話をしてくださった。
 捨てられている薬がどのくらいあるかというと、日本全体で数千億円と言われている。往診に行くと山ほど薬が残っている家がある。1ヶ月で31件、131種類、13万6千円分捨てざるを得なかったというデータがある。血圧の薬は飲みだすと一生飲み続けなければならないと思っている人がたくさんいるが、実はそうではない。塩分を1日1グラム減らすと血圧が2下がる。5グラム減らせば10下がるということ。また、運動をしていない人が運動をすると血圧が10下がる。したがって、塩分を5グラム減らして運動をすれば、血圧150の人は130まで下がり、薬がいらなくなる。高血圧は生活習慣病であり、生活習慣を変えれば改善する可能性が十分ある。しかし、生活習慣を変えないから薬をやめられない。コレステロールについても、食事両方を改善するだけで、40~50は数値が下がる人がたくさんいる。
 日本は、医療費全体に対しての薬代の比率が海外に比べると高いが、そういうところで無駄な医療がかかっているということ。医療費を減らす、無駄遣いをしないということは、地域の人達の意識でだいぶ変わってくる。医療費は皆さんの保険料から払っている。自己負担は3割だが、今後国は高齢者の自己負担比率を上げていく、上げざるを得ないという状況である。そうなってきたときに、自分でも出費を減らすために、病気になっても自分で改善する努力をしないといけない。
 高齢世帯が増えている。自分で病院に通えるうちは良いが、通えなくなったり、自分の身の回りのこともできなくなっている人が増えている。そういう人達が特別養護老人ホームに入れるかというと、寝たきりに近い人しか入れない状況である。どうしたらよいかというと、介護の手があるようなアパートに入る。今後、そういった施設が魚沼市には必要だろうと思う。新病院の周辺にそういった施設があったら良いと思う。自分の住み慣れたうちが良いというのはもちろんだが、ずっとそこにいることで医療費も介護費用も跳ね上がってしまうということであれば、そういう人達が一緒に住めるような所があれば良い。ただ、グループホームでも月10万円以上かかり、それだけの年金を貰っている人は少ないので、年金額が低い人達に対する補助が必要だろうと思う。

 

<在宅医療について>

 高齢化が進んでいく中で、病院で全ての医療をやるのは無理であり、これからは在宅医療が非常に重要になってくる。病院の医療が必要でない人達まで病院に入院しているという現状があるという中で、在宅で医療を受けられるようにしようということで国も進めている。元々医療というのは在宅であった。病院がなかった時代は、具合の悪い人のところへ医者が行っていたが、これは当たり前のことである。在宅医療は本来の医療の姿である。ただ、医療が高度化してくると検査や手術等が行われるようになり在宅では無理なので、病院医療が中心になってきた。また、大勢の人を診るにも病院は効率が良い。
 現在、年間110万人の方が亡くなっているが、その8割の人が病院で亡くなっており、亡くなる方達で病院のベッドがほぼ埋まっている状態である。そこで、在宅で看取れる仕組みを地域につくろうということで、厚生労働省は2012年度を在宅医療元年として、在宅医療を推進するために色々な仕組みをつくっている。この地域は元々きちんと在宅医療をやっていた地域であるので、「在宅医療連携拠点事業」という国のモデル事業に選ばれた。各都道府県2ヶ所ずつくらいということで、新潟県からは魚沼市と長岡のこぶし園が選ばれた。在宅医療に一生懸命取り組んでいる人達のネットワークがあり、南魚沼市の黒岩先生が長年会長をされている。本年9月に新潟市で「第19回全国の集いin新潟2013」が開催されるので、市民の方からも参加いただきたい。

 

2.質疑応答等

Q 今お話された内容について、市の幹部や担当者との意見交換等の機会は今まであったのか?

A 魚沼市ほど医療者と行政間の連絡が良い市町村はない。具体的には小出病院と医師会と市の担当者が密に連絡をとっている。例えば、子宮頸がんワクチンの公費助成についても、医師会と市担当者との懇談会の席で、医師会の方から提案をしたものであり、行政は医師会の意見をかなり聞いてくれる。ただ、意見を聞いてくれるのは良いが、行政が我々に頼り過ぎている部分もある。守門診療所の件についても、市が責任を持って医師を連れてこなければならなかったと思う。

 

Q 新病院の診療科について8科とあるが、何科かが残るのか?

A 外来のみの科も含まれるが、内科、整形外科、外科、産婦人科、小児科、精神科、泌尿器科、耳鼻科の8科である。

 

Q 二次医療圏について、新潟県は他県に比べると範囲が広いが、どうやって決められているのか?
※二次医療圏
特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏で、「地理的条件等の自然的条件及び日常生活の需要の充足状況、交通事情等の社会的条件を考慮して、一体の区域として病院における入院に係る医療を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められるものを単位として設定すること」と規定されている。複数の市町村を一つの単位として認定される。

A 国が医療圏の設定の仕方を示している。その地域人口が一定数以上いないと、そこに医療資源を投資しても無駄(赤字)になる。医者をたくさん集めても患者が少なければ、医療費だけが上がって効率的な医療が出来ない。
 その地域で医療が完結するような地域を二次医療圏にしましょうということになっている。

 

Q 少子高齢化により、介護職の人が不足している。長岡辺りまで行くと介護福祉士や看護師の養成校が何校もあるが、以前は小出病院や堀之内病院で看護師の養成をしていたが、現在は行っていないので、看護師や介護福祉士の養成を地域医療魚沼学校で考えていただけるとありがたい。

A 例えば魚沼に介護師の養成学校を作ったとして、誰がその学校に入ってくれるかというと、長岡に学校があるのであれば恐らく長岡の学校へ行く。北里に看護学校があるが、新潟県内の学生は約3割である。また、卒業すると他県に戻ったり新潟市へ戻ったりするので地元に残る人は本当に少ない。そのような状況の地域に学校を作っても生徒が集まらないので学校運営ができない。若い人は都会に行きたがるので、どうしても都会にしか学校が出来てこないというのが事実である。北里の看護学生に残ってもらうためには、この地域に残るだけの魅力を作っていかなければならないだろうと思う。

 

Q 以前、40代の方が都会からUターンしてきて、50歳で介護師の資格を取ったが、50歳くらいになると、雇ってくれるところがないと言う話を聞いたことがある。今現在、そういったことはあるのか?

A 今は介護職が不足しているので、経験や資格があれば雇うと思う。

<意見等>

  • 人にもよるかもしれないが、介護される人は、若い人よりも歳が近い人の方が良いのではないかと思う。
  • 募集をすると、50代、60代の人達が来る。年齢に限らず、頑張ってくれると思える人は雇うと思う。ヘルパーや介護福祉士の資格はあった方が良い。

 

Q 以前から、市民は医療資源だという話がある。ひとつには患者はお客様という意味合いもあると思うが、良き医療資源になるために、私たちにできること、心がけることなどについてお話いただきたい。

A まず、一番には自分の健康は自分で管理する。健診を受ける、受けたら受けっぱなしにしない、生活習慣の見直しなど。魚沼市の喫煙率は全国平均に比べると高いし、県内でも高い方である。市内の飲食店で全面禁煙にしている店は10軒ない。売り上げに影響があるからということ。喫煙できるところとできないところがあれば、吸っている人は当然喫煙可の店に行きたがる、それは当然のこと。しかし、JR東日本が全面禁煙にしたときに、お客が減ったかというと減ってはいない。それが当たり前であれば皆我慢をする。だから、市内の飲食店全てが禁煙であれば、どこの店もお客は減らない。そういうふうにしていけば喫煙率も下がり、肺炎や気管支炎の罹患率も減る。将来的には医療費の抑制にも繋がる。
 3年前から、行政と医療・保健・福祉の関係者が集まる健康づくり推進会議を開催し、市の方へ色々提案をさせてもらっている。受動喫煙防止条例を作りたかったが、条例はハードルが高かったので、基本指針というものが出された。これにより、平成24年10月から市内の公共施設は全て敷地内禁煙になった。相当抵抗があったが、やっとそこまできた。
 健康管理について、自分でできることは何があるかをまず考えていただいて、できることを実行していただきたい。それから、健康について勉強する機会をたくさんつくっているので参加していただきたいし、地域医療魚沼学校の運営にも市民の方から参加をしていただければと思っている。市民の方が参加できるワークショップなどもやりたいと思っているので、是非参加をしていただければと思っている。

 

次回の会議日程

第3回市民会議 2月3日(日) 14:00~ 小出郷文化会館小ホール
部  会    2月22日(金)19:00~ 小出庁舎302会議室